Prologue :プロローグ

よく、こんな面倒な仕事を、手間暇かけてするようになったのですか?と訊かれるのですが、今でも、映画のようにその場面が出てくるのですが、” Serendipity “「セレンディピティー」 (混沌とした中なら、偶然見つけ出したあかり)とお話ししています。

 

Background:背景

2002年当時、バブル崩壊による大量リストラ時代の幕開けで、大人も子供も疲れ果てていたからかも知れませんが、私の出会う人、出会う人、なぜか皆、肌で悩んでいました。

そんな折、大学(早稲田大学理工学部化学科&応用化学科)の同窓会がありました。

同級生は皆優秀で、数名の大学教授から、ほとんどが化学のトップ研究者ばかりです。

話題が、化粧品の話になりました。肌の専門の知識を教えてもらいました。

ただ、商品の話になると、「それは、正しいの?」という疑問が私にわき上がりました。

「それなら、僕が作ろう」。突然、心にスイッチが入りました。

私の目の前に、肌で悩んでいる人たちの顔が思い浮かびました。

僕のまわりにいる肌に悩みのある人のために、作ろう。

時代の閉塞感が、僕を後押ししました。

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Research:調査

皮膚の組成構造に似ているといわれるオレイン酸、すなわち、オリーブオイル。

オリーブオイルだけで、保存料も、添加剤も何も入れないシンプルな石鹸を作る、これを作れる工場をさがすために、オリーブの産地トルコに住む長年の友人、メメットさんに、連絡しました。

「わかった。大丈夫。僕の会社で、トルコ全土にある支店に連絡して、一番いい会社を探し出すよ」2003年の春でした。

それから、何十種類ものオリーブ石鹸サンプルが私の手元に送られてきました。成分表を照らし合わせながら、自分で使い、あわせて実際に多くの人たち、使って頂きました。

2003年12月から、トルコでの私の目で見る工場巡りが、始まりました。冬のトルコは、雪が積もり、寒風が吹き抜けていきます。

その日は、朝4時に起きて、朝5時にメメットさんが、ホテルまで迎えに来てくれました。

セブンイレブンで、パンとコーヒーを買って、車で走り出しました。3時間ほど走ると、フェリー乗り場。

「こんなところに、ジャポンヤがいるなんて、どうしたことか!?」

という感じで、労働者風のおじさんたちは、興味深げに私をのぞき込みます。

1時間ほどのフェリーのあと、また、ひたすら工場を目指して走りました。

お昼から始まった工場見学と面談は、3時、5時、7時と計4件をこなしました。どの工場も、いい人ばかりでした。結局終わったのは、夜8時でした。

トルコの工場の人たちは遅くまでお付き合い下さりました。

夜8時半、メメットさんと、ロカンタ(町の食堂)で、豆のスープと、卵焼き、パンの遅い夕食でした。

「ケンジ、これから僕は帰るけど、ケンジはここから深夜バスに乗りなさい。

11時半には、停留所に着くでしょう。着いたら、僕の従業員が待っているから、そいつに、車乗せてもらって、ホテルに行ってくれ。日本人は、ケンジしかいないから、問題なくわかるだろう。そして、明日の工場見学は 彼が、2件連れて行ってくれることになっているから、頑張ってくれ」

不安はありましたが、「どうにかなるだろう」と、メメットさんと別れて、長距離バスに乗り込みました。

不安よりも感じていたのが、(メメットさんは、これから夜中10時間も運転して、家に帰らないけないのが申し訳ない)ということでした。

夜11時半、バスは寒風の停留所に着きました。(どこにいるんだろう、私のことわかるかなあ?)

バスを降りて、うろうろしていると、近づいてくる青年がいました。彼は、「ケンジ」と私の名を呼びながら、握手してきました。

私は、彼のトラックに乗りました。彼は、英語も、もちろん日本語もできません。ただ、なんとなく、コミニュケーションは取れます。

「オテル(ホテル)」というと、うなずき、笑ってくれます。こういうときは、笑顔が一番安心します。

彼のトラックは、ホテルに着きました。一泊1000円のホテルでした。シャワーはありませんでした。

それでも、暖房があるだけで、嬉しかったです。「明日、9時半ね」と、紙にかいて、明日の約束をしました。

次の日の朝、時間通り、彼は、トラックで現れ、2社、連れて行ってくれました。

最後は、飛行場まで、連れて行ってくれました。

こんなことが、2004年の8月まで、続きました

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Development:開発

結局、十数社見せて頂きました。

その中から、1社お付き合いして頂くことを お願いしました。

ギュレさんの会社です。

こちらの会社にした理由は、3つ。

品質(商品力)信頼性(技術力)、そして ギュレさんの人柄(人間力)でした。

私の希望は、食用の100%バージン・オリーブオイルと水酸化ナトリウムだけで作り、成分は、オレイン酸(100%バージン・オリーブオイル使用)、水、塩化ナトリウム で香料、着色料等の一切の添加物は、使用しない。保存料も入れません。

このレシピを認めてくれたのが、ギュレさんです。

しかも、手作り石鹸でありながらも、ギュレさんと、工場長、お二人とも化学者。

私も、化学学士(早大理工化学科卒)ですから、化学製品の良いところ、怖いところはわかっているつもりです。純粋なものを、化学者が作るところに価値があります。

ギュレさんは、非常に真摯な人です。しかも、日本にも非常に友好的です。

彼は、毎年のように、在トルコ日本人学校の子供たちの修学旅行で工場見学を実施 してくれています

この人となら、一緒にやっていける、と感じました。

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